大阪地方裁判所 昭和27年(ワ)1259号 判決
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〔事実〕原告はその所有に係る本件建物を原告の書面による承諾がなければ転貸賃借権の譲渡をしてはならない。若しこれに違反したときは直ちに契約を解除し得ること、その他の約定で賃貸した。しかるに被告会社は原告に無断で家屋の階下を被告山内朝雄訴外太田清外二名に転貸したので被告会社に対し昭和二十七年二月十五日到達の書面で本件全賃貸借契約解除の意思表示をなしたから、右賃貸借契約は右同日限り解除によつて終了した。而して、被告会社は右階下を右訴外人等と共同しているからその明渡を求める。また被告山内朝雄による階下の共同占有は無権限による不法占拠であつて原告の建物所有権を侵害するものというべきであるから原告は右所有権に基き階下の明渡を求めると主張し、
被告等は、原告主張の如き約旨で原告所有にかかる本件家屋を被告会社が原告から賃借したこと、被告会社が原告主張の日に主張の如き解除の意思表示を受けたことは認めるが、その他の事実を否認する。被告山内朝雄外原告主張の訴外人等による階下の使用は委託販売契約に基く特殊の使用関係であつて転貸借ではない。すなわち被告山内朝雄等は被告会社の大口債権者であるが、被告会社は昭和二十六年中頃、財界不況のため営業の継続が困難となり、ために右大口債権者は協議の結果被告会社を更正さす一手段として各自の商品を被告会社に委託販売せしめその利益の一部を手数料として納付し、これをもつて漸次債権の弁済に充てているものであつて、右被告山内朝雄等は被告会社との計算関係もあり営業の監督上各自被告会社に出張して本件階下において右営業の督励を行つているに過ぎないと述べた。
〔判断〕原告勝訴
……の尋問の結果によると、昭和二十六年九月頃から被告会社は――等と委託販売契約と称する契約を結び、本件階下の店舖内に右訴外人等の各売場を設け、被告会社の営業名義で被告会社が右訴外人等と協力して同訴外人等の商品を販売し、その売上歩合金を徴していること、右販売による記帳納金等経理一切は被告会社が主宰し、該営業所得も被告会社名義で徴税の対象となつていること及び売上歩合金は被告会社が本件店舖に対して有する場所的利益とその労務の提供に対する対価としての意味をも有し、且つ右訴外人等に売上責任額の定もないことが認められるので、右契約が委託販売契約類似の一面を有しないこともないけれども、――を合せ考えると、被告会社は昭和二十六年七、八月頃から経営不振になり、約一千万円にのぼる債務を負担するに至り対外的信用を失墜したので、同年九月頃前示訴外人等被告会社の大口債権者が集合し鳩首協議した結果本件家屋が地利的に衣料品の販売に適している点に着眼し、右訴外人等が各自の商品を被告会社に持寄つてこれが協力の下に販売し、被告会社の最少限の必要経費と要急債権者の弁済に充てるためこれが販売利益の一部を売上歩合金名下で被告会社に交付し、もつて右大口債権者の支配的意図の下に被告会社の更正とこれら訴外人等の利益を確保しようとしたものであること、売上歩合金額の決定その改定、各自の売場の画定変更等階下店舖の占有関係の設定変更その他全般的運営が右大口債権者たる訴外人等に掌握せられ、被告会社のこれに対する発言権は消極的であること、商品の仕入、売価特に値引、各個の営業方針等は、訴外人等の専権に属し、これらの独立企業たるの性格が強いことが認められ、従つてこれらの事実と――を総合すると、右商品の販売は被告会社の経済的、営業的或は人格的信用に基礎を有するというよりは寧ろ本件店舖の有する地理的利便に重点があり、営業名義人である被告会社の個性の如何に対する依存度が稀薄であり、前示経理関係における被告会社の主宰権能も売上歩合金算定のための一方便であるとも理解でき、また売上歩合金も寧ろ被告会社更正のためと場所的使用の対価としての性質を多分に帯有し、本件店舖における営業型態は被告会社が形式的に営業名義を有するにかかわらず実質的には被告会社及び被告山内朝雄外原告主張の大口債権者等の共同管理に移行し本件店舖の事実的支配(占有)もこれ等共同管理者の共同占有に移転していることが認められるので委託販売類似の契約というよりは寧ろ賃貸借(転貸借)に類似していると認めるのが相当である。――中略――而して本件賃貸借契約解除の根拠は無断転貸禁止とこれに違反した場合の解除権留保の前示特約によるものであるが、該特約の趣旨は畢竟するに民法第六百十二条と同様賃借人たる被告会社が本件家屋の占有関係につき賃貸借関係の基盤をなす双互の信賴関係を裏切つた場合に対処したものであると解するところ、前段認定のように本件店舖が被告会社及び被告山内朝雄外原告主張の大口債権者に共同占有されており経営の主動権が右大口債権者等に掌握せられ、被告会社の営業名義は空漠化しており、被告会社の信用に対する依存度が稀薄であつて被告会社と被告山内朝雄外大口債権者等との契約関係が委託販売でないことは勿論これに類似する無名契約というよりは寧ろ賃貸借にその近似性が認め得られる場合の被告山内朝雄外右大口債権者等の本件階下の使用関係は原告と被告会社間の信賴関係を裏切ること明白であり、従つて右を事由とする原告の解除は有効であるから――以下省略